無償の思いやり

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川を渡らない事には西宮市にはたどり着けない。 正人はどうにか渡ることができる橋を見つけ、西宮市にたどり着いた。 友人の家に目指す途中正人は数多くの悲劇を目にした。 崩壊した自宅の前で呆然と立ち尽くす家族の姿。 花束の前で泣き崩れる母親以外の家族連れ。 きっと母親が亡くなったのであろう。 そうした光景があらゆるところで見受けられた。 「友達を助けたい」 という気持ちは心から溢れ出た物であった。 しかしその奥底にわずかな偽善的なものがなかったか? 被災された方々のことを心の底から助けたいと思っていたのだろうか? 目の前で繰り広げられている光景は正人をそうした気持ちにさせるほどリアルで残酷な光景であった。 正人は暗い面もちで原付を進めた。 次には給水車が給水活動を行っていた。数多くの人々が行列をなし給水を待っていた。 さらに行くと、母娘であろう二人が前方を歩いていた。 娘は小学校の高学年くらいに見えた。 二人は給水を受けた帰り道らしかった。 たくさんの水を貰おうとしたのであろう。ゴミ捨て用のポリバケツ程の大きいのバケツを二人がかりで両側から持っていた。 娘はその重さに苦しそうに耐えていた。
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