正人

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正人は気づいていなかった。 山の頂上がまもなくで 後は急な下り坂が 待っている事など。 正人は自宅にもどり 夕食をとりながら妻と祝った。ちなみに、ご褒美のニューヨークの視察は、9.11同時多発テロにより、旅行券30万円分の支給という形に変わってしまったのだが。 正人が最優秀賞を受賞したことは、社内報や掲示板を通じて全社に知れ渡った。 勿論たくさんの人たちが受賞を祝ってくれた。 しかしこの受賞を喜ばない者達もいた。それは仕方の無いことだと正人は割り切っていたが、自分の上司の加藤までもがそうであることに、一抹の寂しさと不安を感じていた。 そしてその不安は的中する。 正人はその受賞を期に、加藤から無理難題を押し付けられたり、仕事上のミスについて加藤の席横に起立させられ2時間にわたり罵倒されたり。それはオフィスの全員に聞こえるほどであった。 その他数え切れない叱咤を受けるようになったのである。 いわゆるパワハラである。 加藤のパワハラは今に始まった訳ではない。 過去に何人かを、出社拒否や自殺に追い込んだことは有名であった。 そんな人間が管理職で居られたのは、加藤の上司に対する政治力にあった。
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