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『ターゲットにならない事』
それが加藤のパワハラに対する最良の防御策であった。
加藤はターゲットとして正人をロックオンしていた。
しかし正人は案外にも打たれ強い男だった。それは自他ともに認める正人の能力の一つであった。
加藤のパワハラに対し飄々としている正人の姿は、周りのメンバーには不思議にうつったらしい。
加藤の叱咤を受けた後に
「大丈夫なんですか?」
と声を掛けられることは少なくなかった。
もちろん不愉快ではあったが、周りの仲間や家族が支えてくれていた。
また、何より執行役員の橋田の存在は大きな援軍になった。
だが正人がそれほど打たれ強くなったのには理由がある。
受験戦争を勝ち抜いた事
大学での体育会の活動
就職が超氷河期の頃に、留年の為に余儀なくされた就職活動を二度共に勝ち抜いた事
就職早々に担当得意先が破産してしまった事
そうした体験も一因であろう。
しかし最も大きく深い理由は正人の中学生時代の体験によるものだ。
正人は中学時代のほぼ3年間、イジメを受けて過ごした。
正人にとって学校は刑務所であり、通学路は荊の道であった。
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