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正人はどうしていいかわからず、ゴミまみれの自分の机の前に立ち尽くした。
「パタパタッ…」
正人は音のする廊下の方を振り返った。
確かに聞こえた。誰かが走っていく足音が。
「早くかたずけなきゃ」
正人は机を元に戻す事よりも、この光景を他のクラスメイトに見られる事の、恥ずかしさと怖さに押しつぶされそうになっていた。
得体の知れない恐怖が正人の心を霧のように包んでいた。
程なくしてクラスメイトが教室に入って来始めた。いつものように。
入室してくるほとんどのクラスメイトは正人を伏し目がちに見た後、ゴミにうもれた机があるはずの教室の片隅を見て、それぞれの席に向かっていった。
正人は仲のいい友達の輪に向かっていき声を掛けた。
いつものように。
「おはよー」
「…」
「…」
「…、で、それからなぁ…」
まるで正人の存在がないかの様に、それまでの話の続きが始まった。
霧の様に心を包んでいた恐怖は、暗黒のように重苦しい恐怖に変わっていた。
正人はこの日から教室で誰とも会話をしなくなった。というよりも正確にいえば、会話をしてもらえなくなった。
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