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『私は喧嘩などしない。お前を殺すだけだ』
◆2007年7月28日、82歳でこの世を去ったカール・ゴッチ。
勝負に徹底したそのファイトスタイルは、世界規模で見ると評価の賛否が極端に別れたプロレスラーであった。
日本人の気質には合い、「プロレスの神様」と称賛された。
その求道的な生き様は、現代に於いては生き神とも思えたほどである。
そんなゴッチが、現役も引退して久しい齢70代の頃、若いチンピラに絡まれた時の発言が
『私は喧嘩などしない。お前を殺すだけだ』
だという。
そこに虚勢は感じられない。
全てを達観したかのような境地。そして、下手に手出しすれば…やられるのは自分だと思わせるに足りる説得力がある。
この言葉とゴッチの瞳を前にして、チンピラもゴッチと争う事を躊躇し、恐ろしくなったであろう。
ゴッチは宮本武蔵を敬愛しており、日本の剣術、侍の精神を熟知していた事を考えると、この発言は『剣の究極は刀を抜かない事』であるという禅問答のような世界を、ゴッチが体現したのではないか…と思わずにはいられない。
何かを極めた者は、常人を超越した境地にいるのではないか…そう感じさせる発言である。
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