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 その音の主が目の前に来て、斗馬はようやく一部のみ把握した。  人の倍近くある手。その手は人の形ににてはいるものの、爪は鋭く長い獣のものだった。  その手が目の前に伸びて、斗馬はとっさに横に飛んだ。  斗馬が居た地面が抉れ、砂利混じりの土が空を舞った。  斗馬は片手を地面につき、反動を利用して起き上がると土手の上へと駆け登った。そして一番近くの街灯へと後ろも見ずに走り出す。  土手から住宅街へはそう遠くない。百メートルもない距離だった。だが、斗馬はほとんど息をしていなかった。息をしようとするが、極度に乾いた喉が空気を受け付けない。 ――後少し  声にならないそんな表情が斗馬の顔に現れた。目の前には土手へから住宅街との境目に背の低いポールが一本立っていた。 ――そこを超えて住宅街に入れば何とかなる――  まるでポールがゴールであるかのように、斗馬はそこに手を伸ばした。
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