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斗馬は流木にそっと左手を添えると、立ち上がった。
その音に狼男が反応した。両手を地面につけると、斗馬に爪を突き立てるかのごとく飛びかかってきた。
斗馬はその手を打ち落とすかのように流木を振り下ろした。と同時に木片が散らばった。
流木はあっさりと折れ、斗馬の手元にはやけに短くなった流木だけが残った。
――逃げ道なしかよ……
お互い向き合ったまま、目線を外すことができなかった。無論狼男の目は見えないが、その他の器官で斗馬をとらえているのは確かだった。
数秒後、斗馬は舌打ちをすると手に残ったままの流木を狼男に投げつけた。それと同時に狼男が飛びかかって来た。
――ちくしょ、腹減ったまま死ぬのかよ!
狼男は大きく腕を振りかぶり、斗馬の頭目掛けて風を唸らせて振り下ろした。
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