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   肌寒くなってきた秋の夜、中にフード付きのトレーナーを着込み、学ランを羽織った高校生らしき少年の姿が一つ。目深にフードをかぶっているが、赤い前髪が人目を引く。歩いているのが人通りの少ない住宅街でなければ、振り向いて見る人もいるかと思われるほどの不自然な赤さだった。    赤毛の少年は一件の前で足を止めた。表札には風間と書かれている。慣れた様子で少し錆びた鉄の門を開け、門の脇にある犬小屋をちらりと見て玄関まで直行した。  少年は一瞬ためらった様子を見せた後、玄関の戸を開けた。そして靴を脱ぐのと同時に怒鳴った。   「母さんまた玄関鍵閉めてない! 最近物騒だから閉めとけっていっただろー!」    少年はそう言いながら玄関から真っ直ぐ延びる廊下をドタドタと音を立てながら奥へと進んだ。少年が奥にあるガラス戸を開けると、バターの香りが廊下にフワリと広がった。
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