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部屋の中では、エプロン姿の母親らしき女性が少年に背を向けたまま「ごめんごめん」と答えた。そして振り返って少年に小皿を一つ渡した。
「お帰り、斗馬。カラオケどうだったー?お母さんも連れてってくれればいいのに~。あ、今日オニオンスープ作ってみたんだけど、味どう?」
小皿には琥珀色のスープが注がれていた。
「いつもと同じメンバーでちょっと飽きてきたかな~。野郎ばっかで俺の青春どうなのよ?」
斗馬と呼ばれた少年はそう言って頭にかぶっているフードをとった。
赤く透き通るような、人のものとは思えない髪が露わになる。だが母親はそれを気にした様子はなかった。
斗馬は一口分小皿に注がれたスープをすする。
「ああ、旨いんじゃね?」
そう言って台所のコンロをのぞき込んだ。斗馬のぞき込んでから、少し不機嫌そうな表情を浮かべた。
「主食はどこだよ……」
母親は二三度まばたきをすると、近くにあった時計に目線を移した。
「あら、もう9時じゃない! いやだ、お花のお教室ちょっと長引いたの忘れてたわ~。レトルトのカレーと牛丼どっちがいい?」
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