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 斗馬は不機嫌そうな表情を浮かべたまま、ズボンのポケットに千五百円を突っ込んで玄関まで戻る。  玄関で靴をはきながら一言「これで本気でカップラ買ってきたらさすがに怒るだろーな」と呟いた。   「そいやチヅの散歩は?」  犬のリードを手にとって斗馬はたずねた。奥の台所から「まだよ~」と気楽な声が帰ってきた。   「ついでに行ってくる。犬連れなら補導されないっしょ」    過去に何度か夜出歩いて補導された覚えがあるようで、斗馬なりの防御手段の一つのようだ。  そんな事とはつゆ知らず、リードを持って出てきた斗馬に犬小屋からゴールデンレトリバーが顔を出した。斗馬の足元で座り、待ってましたとばかりに尻尾をふりはじめた。   「近頃寒くなってきたからそろそろ家の中にお引っ越しかな」    斗馬は言いながらチヅの首に手をやり、リードをつないだ。  途端にチヅは嬉しそうに走り出した。
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