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家の前の道を右に曲がり、河原の方へと走っていこうとするチヅに、斗馬はリードを引いて制した。
「チヅ、暗いから河原には行かないよ。買い物あるからそっちが先な」
斗馬の言葉を聞いた途端、逆方向にチヅが走り出した。
家から五分ほどチヅのダッシュに合わせて走った所に、一件のスーパーがまだ営業してますと言わんばかりに白い蛍光灯の光を周囲に放っていた。
チヅを入り口から少し離れた場所につなぎ、店の中に入った。
店内は時間のせいか帰宅途中の若いOLやサラリーマンがまばらにおり、惣菜類を半額にしたと言うアナウンスが騒々しく流れていた。
斗馬は適当に惣菜とレトルト食品、父親の為の菓子類を買うと、早めにチヅの所に戻った。
外に出ると、チヅの頭を撫でる人影が一つあった。線の細さからすると女だ。女はどこのものかは分からないが、ブレザーの制服を着ていた。
「あなたの犬?」
背後に立った途端、そう問いかけられた。
「だよ。名前はチヅ。散歩の続きしようか、チヅ」
斗馬の言葉に、チヅはクゥーンと鳴いた。
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