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 斗馬はチヅのリードを握り、女の顔を初めて見た。  大きな目。顔が小さめなので、余計に目が大きく見える。  真っ黒で円らな瞳に吸い込まれるかのように、斗馬はじっと相手の顔を見つめていた。   「その髪、地毛? 染めてないよね?」   「そうだよ……うわっ」    待っていられないとばかりに、チヅが走り出した。斗馬は仕方なしに、少女に向けて片手上げて簡単な挨拶をしてチヅのリードを引っ張ってスピードを調節した。   「チヅ、河原には行かないったら! 暗いし不審者居るからダメなんだって!」    斗馬の声を無視してチヅは河原へと向かって行った。  土手に近づいた辺りでチヅがスピードを緩めた。  マーキングをするチヅを見ながら、斗馬は前髪を引っ張って見つめた。   「これ見て染めてないよね? ってきく奴初めてだな」    今まで事情知らない教師や同級生にはどこで染めたのかなどと聞かれたりはしたが……   「映画でもこんな赤毛見たことないぞ……ああ、アニメとかコスプレならあるか。チヅ、そろそろ帰るぞー。飯食って風呂入って寝たい」    斗馬は一人呟いてチヅの後始末をしようとしゃがんだ。
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