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「お前と過ごした一週間はとても楽しいものだった。いくら感謝しても足りないくらいだ」
「こちらこそ。俺のお節介に付き合ってくれて本当にありがとう」
ゆっくりではあるが確実に、沙里奈の体は削られていく。
「最後に一つ、約束してくれるか?」
「金に関することなら無理だ」
「馬鹿言え」
沙里奈は続ける。
「もし、また会うことが出来たら、私に色々なものを見せてほしい。
私が生きている間に見られなかったものを。
私が生きていたら見られたであろうものを。
ずっと、お前の傍で」
「一つ、条件がある」
「条件?」
「あぁ」
俺は、もう首から上だけとなった沙里奈の頭に手を置いた。
「いい女になれよ。なってなかったら、今の話は無しだからな」
「……分かった」
沙里奈の目には、もう涙は無かった。
「ありがとう。悠二――」
一陣の風が吹く。
沙里奈は、
最高の笑顔を残して、
俺の前から消えた。
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