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「あいつ、最後に名前で呼んでくれたな」
手に残る温もり。
最初に出てきた時には氷のように冷たかったのに。
これは多分、あいつが普通の人間に戻れた証拠だろう。
思えば谷口から貰ったビデオから全ては始まったんだよな。
俺は沙里奈をテレビから出さないように思考をこらし、沙里奈はテレビから出ようと必死になった。
それから何故か一緒に暮らすようになって、沙里奈は人の心を取り戻した。
そして今、沙里奈は成仏して、俺は生きている。
めでたしめでたしのはず。
でも、こんなに悲しいのは、なんでだろう。
「ほんと、散々な一週間だったなぁ」
大げさに叫んで夜空を仰ぐ。
「畜生……。月明かりってやつは……目に染みるなぁ……」
月は、少し滲んでいた。
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