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…だけど、大抵彼は前の方。
遠くて。同じ教室にいるはずなのに、もの凄く遠くて。
私は席替えが嫌いだった。
今回も案の定、席は後ろの方。
くじの紙と黒板の番号を見比べながら、席に向かった。
ああ~…、どうせ今回も席は遠い。
…ほら、前の方にいるし。
いいよ、クラス一緒なだけで奇跡的なんだよ。
彼を瞳に映せるだけで幸せ者だよ!私!
そうだよ!ハルちゃんなんてクラス自体が遠いじゃん!!
はぁ…、ため息をついた。
「ため息つくと幸せ逃げるぞー」
…?!
声の方向は、隣。
そう、これからのお隣さん。
相手は、………彼だ。
前に居たはずの、彼だ。
「あ、そうそう。俺、寝てたら起こしてくんない?さすがにそろそろ真面目にしなきゃいけないし」
それにしても、黒板がとおー
なんて声をあげている彼。
それに比べて、固まる私。
何故ここに彼が?!
「ま、」
「んー?」
「前の席じゃない、の?」
あ、いや、さっき前の方にいたし!
弁解するかのように聞くと、笑いながら彼は、
「勉強熱心な委員長と替わったから」
委員長…!初めて君を尊敬するよ!
……………でも
やっぱり、席替えなんて嫌いだ。
だって次の席替えが、悲しくなっちゃうじゃないか。
背中を見ることはできないけど、
「宜しくな?」
近付けたのは、素直に嬉しい。
(ありがちだけど、時が止まってほしい)
.........END
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