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炎田の中 ただ走る 逃れるでもなく ただひたすらに 母を求めて   「母様 母様は何処へ いらっしゃいますか?」   問いに応えるは 業火の音と 消え逝く者の嘆き   火の熱 人の叫び 地獄の音 衆生が焼かれる おぞましき異臭     その全てをもっても 童は走る まるで 周りを嘲る 舞のように     タン タン タン タン タン     そして童は そこへ辿り着く 焼け崩れ 無に等しい場所に   「ああ、母様 ここにいらっしゃったのですね」   童は静かに 穏やかに笑う 微笑んだまま 母様の元へ寄る 母様は笑っていた   「これからは ずっと一緒ですよ 母様」     既に空っぽの母様を 互いに赤く染まった手で繋ぎ 二人は 歩いていく       タン タン タン タン タン
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