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ガタン、ゴトン
暗くなったとはいえ、まだ夜遅くではない為
電車の中は学生やサラリーマン達でもう座る場所はなく、豪と先輩はドアの前で野球バッグを置いた。
「さっき見とれちょったけど、お前いつから香織を好きになったん?笑」
ニヤニヤしながら先輩が問い掛ける。
「えっ!知り合いがいるんですか!?」
思わず大声を張り上げてしまい、周りの人々が眉間にシワを寄せジロッと睨んでいるのが殺気立つようにして分かるが、今はそれどころではない。
「…お前声大きすぎちゃ!知り合いも何も、南洲のエステ科の2年ちゃ。斉藤香織。結構可愛いで有名やし。だいたいお前とタメやろぉが。」
先輩が周りをキョロキョロしながら少し小声で言う。
エステ科の斉藤香織か…
友達に半強制的に連れられて1度見に行ったことはある。
小さくて胸が大きいと評判だったその子は
ギャルが嫌いな俺も、ボタンを3つも開けて強調していた谷間を見るのは嫌じゃない。
入学した頃はナンパや告白の嵐で、女だらけのエステ科でいじめにあっていたとかいないとか。
そもそも俺が行く南洲館高校は
総合学科、調理科、電子科、エステ科があるのだか
校舎は一緒の学科もある。
なんでも喧嘩や揉め事ばかり起こる南洲は、他学年へのクラスへ行くのは禁止されていた。
しかし南洲のぶちキレた生徒が、そんな規則を守るはずがない。
それを校長は少しでも学年を離そうと学科で区切るよりも、学年で区切っていた。
それでも食堂は一緒だし、南洲生が揉め事を避けることは出来ないけれど。
「登校日行ってみようかな…」
「お!?お前告るんか!?泣いて帰ってくんなよ~!!笑 あっ、てか俺もう着いたけ。じゃあ明日また部室で~☆」
勝手に勘違いしている先輩にお疲れ様でした!と告げる。
どうせ今慌てて弁解したところで信じてくれるわけがないし、確実に今日の夜にメールや電話で野球部みんなに広がっていくんだから
明日みんなの前で違うと主張した方が早い。
それよりも、あの子がどこの誰だか知りたくて
何だか胸の鼓動が電車の揺れに共感して、身体中が波打っていた。
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