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「豪って名前、初めて聞くなぁ~」
美咲は塾の宿題もそこそこに、メールを楽しんでいた。
友達や先輩の紹介で、何度かいろんな人とメールしたことはあるけれどこんなにうきうきしたのは久しぶりだった。
何と言っても相手は球児。
美咲が喜ぶ気持ちも分からなくはない。
『美咲は西中なんだ。俺は麻中だよ!』
『麻中って隣町の?てか中学も西中の隣ですね☆高校はどこなんですか?紙にはN校って書いてたけど…』
『南洲だよ!知ってる?』
「な、南洲ぉ~!?…いてっ!!」
美咲はびっくりして頭を上げた際に、スタンドライトで後頭部を激打し、打った部分を自分で摩る。
南洲ってあのヤンキーばっかの南洲よね!?
私、もしかして騙されてる?
不安に思いながらもメールを送る。
『南洲ってヤンキー多いですよね~。もしかして豪先輩もヤンキー?笑』
一見おちゃらけたメールだが美咲の顔は真剣。
変なメールが来たら、もう返さないでいようと思っていたからだ。
『俺は特待であの学校に行ったんだ。まぁ、頭も悪いし↓↓笑』
本当かなぁ…
不安に思い、メールを返すかどうか悩んでいたらまたメールが来た。
『南洲に行ってたらダメ?南洲だからってヤンキーなわけじゃないし、第一ヤンキー嫌いだから。もともと野球がしたくて、特待くれる所ならどこでもよかったんだ。それでも南洲が嫌いなら仕方ないけど…』
私は今まで疑っていた自分が、情けなかった。
周りが周りだから自分も同じ。
そう扱われることが、何よりも嫌だって分かっていたはずなのに。
『私の1番仲いい友達もみんなヤンキーなんだけど私は違うんです。でも一緒におるけ同じって周りからは言われて…こんな風に言われるのが嫌って分かってるのに…ごめんなさい。』
もうメールは返ってこないかもしれない。
先輩を傷つけたかなって思っていると、メールの着信音がなった。
『いいよ!俺は言われ慣れてるから☆南洲は評判悪いの俺も認めてるし。てか美咲はヤンキーだからヤンキーって言われるんだよ。笑』
優しいんだな…豪先輩って。
それが豪の初めてメールした印象だった。
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