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「フェムト様、ようやく見つけましたよ。
さぁ、お父様やお母様がお待ちです、一緒に行きましょう」
突然現れた屈強な兵士がラルの手を取る。
恐怖を感じたラルは持てる力を全て使い振り払おうとするが、子供のラルに振りほどける筈もない
「は、離してっ!誰か、誰か助けて!」
わけも分からず兵士に腕を掴まれたラルの頭の中には"怖い"という感情だけが満ちている。
傍らのシエルも同様、突然のことに泣くことも叫ぶことも忘れ、ただ唖然と立ち尽くすのみ……
その声の異変に気付いた孤児院の先生は目の前でラルが兵士に捕まれている気付き、急いで家の中から飛び出して兵士と子供達の間に入り込んだ
「何なんですか貴方達!!私の子供達に手を出さないで下さい!」
両手を広げ、子供を守ろうと必死に叫ぶ母。
我が子を守るため、その華奢な体を大きく広げてラルを後ろへ隠す。
しかし兵士は何事もなかったかのように、むしろ先生の存在すら見ていないかのように前進し、先生の顔すれすれのところで立ち止まった
「貴様、誰にその言葉を吐いたか分かって言ってるのか?」
「―――え…?」
「そこにおられるのはシルディア王国第二王子、フェムト様だ。
4年前何者かの手によって連れ去られ行方不明になっていたが……まさかこんな所に居られたとは…」
――――え…?
「フェムト様をこの4年前保護していたことは感謝する。
しかし本来貴様ごときが母を名乗ることなどあってはならぬ御方だ。身分をわきまえろ!」
――――僕が、王族?
―――何を、言ってるの?
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