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「へ、兵士さん…。何かの間違いですよ、僕の名前はラル。フェムト様って人じゃありませんし、ここにはいません。
他をあたってください」
兵士の言葉に萎縮する母の後ろから姿を現し、母を守るように前進しはっきりと答える。
その姿は母を守るため、少しでも強く見せようとはっきり、堂々とした態度で、ただの6歳の少年とは思えない程力強いものだった
「…幼いながらも堂々とした口振り、兄のエクサ様とそっくりですよ。
やはり貴方は王家に必要不可欠な存在だ……。
寮母、貴方の孤児院が経済的に難航しているのは知っている。我が国としても幼い子供達には元気にすくすくと育って欲しいと願っているし上層部でも寄付金の増加を検討している。
多くの子供の将来を預かる寮母ならお分りだろう……、子供たちのことを思えば何を優先すべきかなど……」
「………っ」
兵士は、脚を震わせながらも母の前に立ちはだかるラルに自分の大人気なさを感じたのか、小さな声で「貴方の母に危害を加えることはしませんよ」と呟く
きふきん、なんこう、幼いラルにはそれが何を意味するのかは分からない。
しかし、自分が居なくなることでこの孤児院が経済的に楽になるだろう、ということだけは漠然と理解していた。
兵士さんは僕が必要だと言った。
僕が王家の人間だと。
そして、僕がここを離れることで孤児院に沢山のお金が入るのだと。
………お母さんじゃなくても分かる。
僕がここに残るかどうかなんて考える迄もない。
僕を必要とする人。
僕が居なくなれば良い暮らしが出来る人々。
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