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――――…ムト
「フェムト!ほら起きろっ!」
「……ん…、お兄ちゃん……?寒……」
ベリッ、と布団を引き剥がされ、ベッドの上に1人寒々しく取り残されるフェムト。
外気に奪われる体温に、寝呆けた様子で布団を探そうと両手をわたわたと動かす様をエクサはため息混じりに眺め、仕方無しに引き抜いた布団を掛けて、自分もベッドに腰掛ける
「窓あけっぱにして寝るもんじゃないだろ?今朝は雪降ってるんだから風邪引くぞ………」
この部屋寒すぎて息も白い……と呟くエクサの言葉にフェムトは目が覚めた
「雪、降ってるの?」
「ん、あぁ、そういえばお前は雪が好きだったな。
――――……雪は、お前とよく似ているからな…」
「――――え?」
「『お前(ラル)と同じ、真っ白で、少し(ちょっと)冷たい、きれいな雪…』」
――布団に包まりながらフェムトは目を見開いた。
「…………、僕は、冷たくなんかないよ……」
「何言ってんだ。こないだの夕飯でピーマン拒否ったクセに」
あの後料理長にどんだけ怒られたか、とグチグチ呟くエクサと重なる
幸せだった、6年前のあの頃の日常が…………
「…お兄ちゃんの好き嫌いを無くすためだったんだよ。
残さず食べなきゃ、ね?」
「む……、正論か……」
そんな兄にゆっくり微笑み、目の前に広がる白い景色に愛しさを感じた
――――…僕はまた、皆と遊びたいな。
――――…いつか、皆が幸せになったら、お兄ちゃんも一緒に
―――この白銀の雪を、皆の足跡で生め尽くすんだ………
END.
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