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宵の刻、教会のステンドグラスが月明かりを浴びて不気味な輝きを放つ。
その教会には秘密があり、祭壇を特殊な技法を用いて横にスライドさせると地下へと続く階段が現れる。
その階段を下に下にと下りていくと、太陽や月、はたまた人工の明かりすら存在しない真っ暗な闇だけが蔓延する部屋にたどり着く。あるのは石造りの壁に突き出した燭台と、それに灯された数本の蝋燭の灯りのみ。外界の"汚れ"を全て取り払ったかのような、そんな空間
その中央には長方形の祭壇が置かれ、その上にはこの世に生を受けたばかりの無垢な赤ん坊が。そして祭壇と赤ん坊の周囲を囲むようにして黒のローブを全身に纏った7人の人間がその赤ん坊を眺めていた。
フードに隠されていて表情は分かりにくいが、その瞳には喜び、怒り、悲しみ、憎しみなど様々な色が込められていた。
そのうちの1人が口を開く
「皆の衆、この赤子の背を見てくれ。」
背の低い年長らしい男が祭壇に横たわる赤ん坊の背中を見せ付けるように抱き上げた
「知っている通りこの赤子は人間ではない。ましてや天使でもなく、悪魔でもない」
赤ん坊の背中、丁度二次元の世界なんかでは翼が生えるような位置に不思議な切れ込みが背骨を中心に2箇所あり、その切れ込みからは黒くて小さな羽が見え隠れしている。
そう。この赤ん坊は生まれたときから『翼』を持った子供なのだ。それも天使の持つような純白ではなく、ましてやコウモリの持つ形状の悪魔のような翼でもなく、真っ黒に染められた天使の羽をもっていた。
世間では知られていないが、この世では何億に一の確率で翼を持った子供が生まれることがあった。しかし彼等は決して翼を持っているなどと公言せず、ひた隠しにしているため世間に知られることは無い
こういった子供達は例外なく不思議な力を持ち、善にしろ悪にしろ多大な功績を残す存在だったが、反面宗教的な関係で忌み嫌われる存在だった
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