12、No title【最強系/魔物使い/ある種定番】

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「―――っく……ふぇ…」  屋敷の奥の森で、着流しを纏う男の子が泣いていた  袖口や胸元から見える肌には痛々しい痣が見え隠れしていて、少年が何かしら身体的な苦痛を受けているのがよく分かる  だが、彼が泣いているのはそれが理由ではない 「僕が…、僕が弱いから…魔法が使えないから……っ!だからお父さんもお母さんも…っ、柚子も、僕の事が嫌いなんだ……」  男の子の頭の中でループするのは、父からの一言。 『お前には本当に失望したよ』  今朝の鍛錬の時間に父の口から出た言葉。  この言葉に、今まで貯め込んでいた感情が涙と共に一気に溢れ出た  小さな頃からそうだった。  彼、葉樹(ようき)は魔法に特化した神代家に生まれながらも、どういう訳か基本魔法すら使えない体質だったのだ  基本魔法というのは、火や水といった属性を具現化させるだけの名前すら無い魔法のことで、幼稚園に入る子供でも使えるような魔法のことだ。いや、魔法と呼べるものですら無いだろう  だが葉樹はそれすら出来なかった。  魔力が無いわけでは無い。  むしろ、内在する魔力を検知する道具を破壊してしまう程大量の魔力を持っているくらいだ  問題は、その魔力が使えないという事  決して物覚えが悪いのではない。  むしろ頭は良い方だし、物事を素直に受け取って自分の知識にしていける天才肌の気があるくらいだ  問題は、やはりその魔力が使えないという事  どれだけ魔力や知識、才能があっても、結局はそこに戻ってしまうのだ  どれだけ高価な宝石の原石だとしても、それを宝石に変えられないのならただの石ころと同じ  家族や親せきも最初は葉樹の才能を信じて、どうにか魔法が使えるようにと思考錯誤していたのだが、小学校の高学年にもなってしまえばその望みも消えてしまったのだろう  そして先ほど、ついに我慢の限界に達した父親からあの言葉を口にされたのだ  その言葉にショックを受けた葉樹は勢いで道場から逃げ出し、屋敷の敷地内にあるこの森で自分の不甲斐無さを憎み、家族から見捨てられたことに悲しんでいたのだ
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