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「おんやぁ?ねーねーキミキミ。どーして泣いてるんだい?」
「何だか美味しそうな臭いがするねぇ。良い人間だ」
「良い人間だ!」
泣きすぎて頬が痛くなり始めた時、不意にどこからか不思議な声が聞こえてきた
耳に付くような、まるで音割れした音声のような、どこかエコーのかかったような、そんな声。
それも、一つだけではない
「だ…誰…?」
「ボクらかい?」
「ボクらはヨーカイ!」
「うそうそ。ボクらはマモノ!」
漫画に出てくる魂のような物体が3つ、ケラケラと笑いながら葉樹を取り囲むようにふよふよと浮遊している
「まものって…!や、やめてっ、僕は美味しくないです!!」
魔物と聞いて、思わず葉樹は自分を庇う様に全身を縮こめる
だが、それを見て3匹の魔物は別段何をしようとするわけでもなく、勝手に怯えている葉樹を見て楽しそうに笑っているだけだった
「クスクス、キミはとっても美味しそうだよ」
「っていうか美味しいよ。キミの魔力」
「たくさん出てるし、味も良い!キミは良い人間だ!」
そして3匹が「良い人間だ」と合わせる
「魔力……?きみたちは……、魔力を食べるの?」
ようやく泣きやんだのか、そして食べられないと安心したのか、涙目のままだかだいぶ落ち着いた葉樹は不意に尋ねた
葉樹は魔法が使えない分、知識を高めようと色々な事に興味を示す子供だった
「そうだよ!ボクらは人間が出してる魔力がごはん!」
「もっと強くなれば人間も食べちゃうけど」
「でもでもボクらはこれでじゅーぶん!」
縦横無尽に浮遊しながら絶妙なコンビネーションで言葉を続ける魔物たち。最後の一匹がえっへん!と白くつるつるした胸を張らせる
その様子を見て、葉樹はなんだか笑いが込み上げてきた
「ぷっ…!あはは……!」
「お?笑ったぞ?」
「泣いてたクセに笑ったよ?」
「そんなに楽しかったのか?良かったよかった」
葉樹の笑い声に呼応するように魔物たちもくるくると動く
葉樹自身、こんなに笑ったのは久しぶりだった
今までは泣くか後悔するかくらいしか無かったので、久々に込み上げてきた"楽"の感情に歯止めが利かず、盛大に笑った
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