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「違う…違うんだよ……。君たちに色んなこと教えてもらって……僕が魔物使いかもしれない、っていう事が分かった。
自分の事が知れて凄く嬉しかったよ…」
だけど…、と葉樹の言葉が続く
「僕は一生…どんなに頑張っても魔法が使えないんだ、って思ったら………僕はやっぱり…駄目なんだな…って思ったら………」
その後の言葉は紡がれず、しゃくりあげる声だけが森に響いた
魔物達が何か言葉を発しようとした時、そのうちの一匹が何か物音を聞きつけ、今にも声を発しようとする口を全身で塞いだ
その様子を葉樹は不思議そうに見上げていると、ふと聞き慣れた声が背後から聞こえてきた
「良かった…ここに居たのか…葉樹…」
「……お兄ちゃん…?」
葉樹と同じく、部屋着と思われる着流しを纏い、走っていたのか若干息を荒くした少年、樹(いつき)が草木の間から姿を現した。
首辺りで綺麗に纏められている髪も走り回った影響か若干崩れていて、草履に付いた木の枝などからして、相当探し回っていたらしい、というのが分かる
「探したんだぞ?鍛錬場で親父の怒鳴り声が聞こえたと思ったら、親父が「あんな奴知るか」なんて言ってたし……。
あそこから逃げ出したんなら朝ごはんまだ食べてないだろ?作ってあげるから、一緒に食べよう?」
「え…あ……」
伸ばされた手を取るか取るまいかと葛藤する
普段であれば迷うことなく兄の手を取り家の中へと入るのだが……
ちらり、と3匹の魔物の方へと振り返る
彼らを置いて帰って良いものかと悩んでいるのだ
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