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今年で高校生となった葉樹は未だに魔法を使うことは出来なかった。
"あの日"以来、家族は葉樹に対して冷たく当たるようになり、最初はそっけない態度、無視、そしてやがて葉樹を家族と見なさなくなっていったのだ
だが葉樹は泣かなかった
たった一人、兄だけは優しくしてくれたし、何よりあの日以来葉樹の側には3匹の魔物たちがいた。
悲しい気持ちになった時も、くるくると陽気に踊って葉樹を楽しませてくれた
それが意図的だったのか無意識だったのかは分からないけれど、いつでも明るく楽しい3匹の存在に、葉樹の心は支えられた
こうして名のある魔物へと成長した今でも葉樹の側を離れずにいるのだから魔物たちも何かしら思い入れがあってのことだろう
「…みんな、もうすぐ学校だから僕は話せなくなるけど、ごめんね」
「おうともよー!」
「いつものことさー!」
「ボクらは好きに話してるからなー!」
徐々に同じ制服を着た人が増えていく中、ここにいる全員がこの3匹の愉快な姿を見ることも、陽気な声を聞くこともできないんだなと思うと、ちょっと得した気分になる葉樹だった
*
「なぁ、お前ホントに魔法使えねーの?」
「…え?」
学校の自分の教室、自分の席について早々、葉樹はクラスの男子から声をかけられた
彼は緋澄了(ひずみ りょう)。神代家と同じく名の知れた家の長男だ
今まで一度も話したことが無い了から突然話しかけられて戸惑う葉樹だが、ただYESかNOかを聞かれているだけなのでとりあえず、と口を開く
「…えと、うん。まぁ…」
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