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これはまだ私が幼かったころの、不思議な夢のお話。
当時、私の家には古ぼけたピアノがありました。
私が生まれた頃から既にあったので、何年前の物だったのかは、今ではもう分かりません。
ただ、目立った損傷はペダルのスプリングが弱まっていた程度で、それ以外は塗装が剥げた形跡も無いし、不思議と調律もされていて、時々私がピアノを触る事があっても音が外れている時は一度たりともありませんでした。
きっと、調律していたのは祖父だったのでしょう。何故なら、あのピアノを奏でていたのはいつも祖父でしたから。
私の家は小ぢんまりとした楽器店で、祖父が若い頃に立ち上げたものでした。
祖父は息子に店を継いでもらおうとは決して思っていなく、また、父も音楽ではなくITの道を進んでいたことから、一代限りで祖父の店は終わりました。
このピアノは、そんな当時の楽器店で飾られていた売り物の一つです。
この他にも、店をたたんだ際に残った楽器が数点あったと記憶していたのですが、今手元にあるのはこのピアノだけになりました。
他の楽器がどこにいったのかは、今では分かりません。
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