17、14の続編

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* * 拝啓樹兄さん。  4月も半ばになりましたね。  春が少しずつですが姿を見せ始め、通学路の桜の木もだんだんと芽吹き始めました。  ほんとうに小さな変化ですが、毎日の楽しみです。  さて、最近は忙しくてゆっくり話す機会がありませんでしたね。この環境にももう慣れたものとばかり思っていましたが、どうやらそう簡単にはいかなかったようで、心のどこかで兄さんと会えない事に寂しさを感じていたようです。  本題に入りますが、今回お手紙を書いたのは僕に友達が出来ました、という報告がしたかったからです。  恐らく兄さんも知っていると思いますが、緋澄の家の長男で、名を了といいます。  どうやら緋澄の家では厳しい教育を受けていたようで、窮地に追い込めば僕にも魔法が使えるようになるのだと思っていたようです。いきなり教室で攻撃されたときはどうしようかと焦りましたが、そこはあの子たちが助けてくれたので、僕もクラスのみんなも無事でした。  彼も悪人ではないので謝ってくれましたし、話してみるととても楽しい方だということがわかりました。  初めての友達なので僕は今でも緊張してしまいますが、どうやら学校生活は楽しくなりそうです。  兄さんも学生の頃はこんな感じだったのでしょうか?そう思うとちょっぴり羨ましいですね。    お忙しい中このようなものを送りつけてしまい申し訳ありませんでした。  僕は元気です。兄さんも無理をなさらないようお気を付けください。  それでは    追伸  あの子達が2,3日後に兄さんの寝室に乗り込みに行くという計画を立てていました。  文面上で申し訳ありませんがあの子達に変わって深くお詫びします。ごめんなさい。    葉樹 * * 「はは、いくら書面だからって堅っ苦しい書き方してんなぁ。もうちょっとフランクに書いたって良いのに。にしても葉樹も可愛いとこあるなぁ、寂しいからお手紙書きましたって。 友達ができたこともだけど……ほんと楽しくやってるみたいで安心したよ。 ただなぁ……―――そういう報告はもうちょっと早く欲しかったかな…」 真っ白い便箋に書かれたきれいな文字列を目で追い終わると、樹はちらりと背後を振り返ってみた。 そこには散々暴れまわった後でようやく落ち着いた魔物達がさもご満悦といった表情で寝転んでいて、樹の口からはつい、はは、と苦い笑が漏れた。
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