2、黒き翼を持つ者へ【長編/現代ファンタジー】

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 思えば空との出会いは奇妙なものだった。  何せ乞食のようなボロボロの衣服に裸足という風貌の少年がレストランのゴミ箱を漁っていたのだ。見かねた私は少年を家に連れて行き、既に衣服としての機能を果たしていない布切れを剥ぎ取って風呂に入れ、しばらくの間少年を家に置いておくことにしたのだ。  簡単に言えば、これが私と空君との出会い。  家の隣で小さなネットカフェを経営していた私は仕事の際に度々彼を連れてきては遊ばせているうちに、何処からそんな情報を聞いてきたのか突然空君は口にした。 『俺、ねっとかふぇなんみん?になる!』 『………………、はぁ?』  あの時はたっぷり10秒ほど間を空けて盛大に驚いたものだ。  聞けば空君は無償で家に置いてもらうという事に罪悪感を感じていたらしく、たまたま来ていた客からネットカフェ難民という話を漏れ聞いたんだそうな。  私としては3LDKという間取りで1人暮らしは寂しいものがあったので出来れば一緒に暮らしていたかったのだが、空君がどうしてもと聞かずに結局今の形になってしまったということだ  思えば空君は自分の力で何かをやり遂げたかったんではないかと思う。  話を聞く限りでは空君は気付いた頃には家も家族もお金も無い生活をおくっていたんだという。信じられないことに私と会った当初は名前すら無く、私が勝手に「空」という名前をつけたほど。  昨今の日本においてそんな子供が本当にいたのだと思うとなんだかやりきれない気持ちになるが、その1人である空君を私は少しでも救うことが出来たのかな、と思うと少しだけ嬉しくなる  どうしてご両親は空君を捨てたのか。気付いた頃には1人だったと聞くから自我が目覚める前から捨てられていたのだと私は勝手に推測する。  見つけた当初はかろうじて言葉は理解していたけど文字も読めないし書くことも出来なかった空君はそんな状況で何故今まで生きていられたのだろうか、それは分からないけど…… ―――――私には空君が捨てられた理由が何となくだが分かる気がする 「空君~、お店の蛍光灯変えてくれないかな?」 「わかった~!」  飲んでいたミルクティーをテーブルの上に置くと、私が持っている新しい蛍光灯を取って電気を消す
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