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彼は4年前、魔王討伐隊の一員として旅に出たことがあった。
12歳という若さにも関わらず剣や魔法の才に突出していたリュートは殺された母の敵を討つために討伐対に参加し、必ず魔王を倒してみせると幼いながらも力強い誓いを立てた。
見送りに来た姉は泣き崩れ、そんな姉を近所に住むおばさんがなだめていたのをリュートは見た。
必ず、必ず魔王を倒してこの町に帰ってこよう…
そうリュートは心に刻み、街に背を向けて旅立っていった……
―――しかし…
「……、えーと…。忘れ物かい?」
「あ、あはは……」
町を出てわずか30分
リュートは帰ってきた。
別に忘れ物をしたわけではない。
本当に"旅を終えて帰ってきた"のだ。
あれだけ盛大に、かつ勇ましく旅立っていったくせに一時間すら経たずに帰ってきたというなんとも情けない情報を知った町の人々は散々リュートをからかい、「まぁまだ12歳だから」と結論付けて特に気にすることも無かった。
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