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アナログの腕時計を眺めてルリはそわそわとした面持ちで夕月を待っていた。
時刻は22:50、もし夕月が時間どおりに来るとすればあと10分となる
夕月が時間にルーズでないことを知っているルリはこの街灯の少ない廃ビルの前で10分も待つのか…、早く来てくれないかな、と周囲をきょろきょろと確認しながら思う
「やぁ委員長。時間ぴったりだね」
「夕月君!…と、えと、月影…さん?」
「あぁ」
ふいに聞きなれた明るい声が聞こえ、見れば待ち望んでいた夕月と月影の姿があった
昼間の出来事もあり、月影に苦手意識を覚えたルリは若干気まずそうな口調になる
それでも街灯も無くて暗かった外が夕月の声によって少し明るくなったような気がしたのは彼の明るい雰囲気のおかげだろうか
「こんな所(ビルの前)で良く待ってたね?月も隠れてたから暗かったでしょ?」
「そりゃあもう…」
「あはは、遠い眼だ。
それじゃ中に入ろう、そっちの方が明るいよ」
「うん」
夕月に促されて廃ビルの中へと入っていく
封鎖されていて鍵や鎖がかかっているのを手慣れた手つきで解除して進む夕月を見るあたり、よくここに来るのだということが分かる
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