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(…でも……、どうして?)
何故彼がこんな廃れて人のいないビルの屋上に行くのか。
そこまで考えてルリは昨日見た映像を思い出す
(あの大きな生き物…、確かに血を噴いて倒れてたよね………。夕月君と何の関係があるんだろう……)
前を歩く夕月をちらりと見る
ルリと同じか少し上かという身長に細身の体。何よりあの優しそうな表情…。
―――彼があの生き物を殺したのだろうか?
そして昼間の屋上での会話
(処理って……、それに『引きずり込む』って………。もしかして私、とんでもない事になってる…?)
夕月が何か犯罪気味たことを起こすとは思えないが、昨夜と昼間の出来事から様々な妄想を孕んだルリの脳内では夕月が得体のしれない怪物のように見えた
(ぎ、逆にあの優しそうな顔が怖い気が……)
いくら歩きながらじゃがりこ(サラダ)を食べていて、しかも食べすぎだ、と月影に頭を殴られていたとしてもやはり夕月が怖いと感じてこれから起こる出来事に身震いする
だが戻るに戻れない雰囲気にルリは半ばどうにでもなれ、と自棄になってそれまでの振り切る
「委員長、着いたよ」
「ひゃっ!…へ?あ、うん…」
「大丈夫かコイツ…。心此処に有らずって感じだぞ」
「き、気にしないで…。ちょっと考え事…」
まさかこの二人でスプラッタな妄想を膨らませていたとは口に出来ず、ルリはあはは、と乾いた笑いで誤魔化す
ふと見ればそこはビルの屋上で、下に居たときには隠れて見えなかった星や月が柔らかく辺りを照らしていた
どうやらこのビルは他よりも階層が高いようで、まるで自分が夜空の一番近くにいるような錯覚にも陥る
「すっ……ごぉい…、月があんなに大きい…」
「でしょ?ここは俺の月見スポットなんだ!この街はあんまり開拓されてないから夜は街灯も少ないしネオンのライトも無い。星や月の光が良く見えるんだ」
「ついでに仕事場でもあるな」
「仕事場?」
月影の言葉をルリは不思議に思い反復する
それに対して月影は
「………、すぐに分かる」
と言って月を見上げた
まぁ自分にも分かるのだから良いか、とルリも大きくて丸い月を見上げる
(……あれ?)
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