7時忘れの扉【異世界現代混合ファンタジー/完全ネタバレ/時忘れ1年後】

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今日、僕はこの世界から旅立つ それは突然のことでも無くて、僕にとっては七五三や成人式のような一種の通過儀礼のようなもの 『僕がこの世界から旅立つ』ことはもう生まれたときから決まっていたことだった 友達や両親も悲しむことはないし、喜ぶことも無い 生まれたころから病弱でずっと病院で暮らしていたんだから当然と言えば当然なのかな…… 白い髪と肌に赤い眼 生まれつき色素の薄い僕にとって日の光は天敵といって良いもので、それに加えて身体機能が弱かったこともあったせいか病室から出る事自体が稀だった だから学校になんて行けるはずがないし、友達だっている筈がなかった 両親も最初の頃は何度かお見舞いに来ていてくれたけど、それも段々少なくなって今では年に数回来る程度 きっと両親も、僕の事は『そういえばいたんだよね』程度にしか思っていないだろう それに、こんな僕よりも今は小学6年生の弟の世話の方が大変だろうしね… ――――今日はきっと、この日の当たらない薄暗い部屋で一人か二人のお医者さんに見守られながら旅に出るんだろう 今日は弟の卒業式 だから両親は来ない。勿論弟も… でも、寂しいとは思わない。悲しいとも思わない それは両親が思っているように、僕も父や母の事は『そういえばいるんだよね』としか思っていないから むしろ、僕はこれからの旅に対する『期待』の方が大きくて、ピッピッという心電図の音が耳に入らないほどわくわくしていた いよいよ今日。これは『羽鳥 大樹』というヒトとの別れであり、そして『僕』の旅立ち ピッ… ピッ… ピッ……… …行ってきます… ――――ピーーーー………
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