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一つ、雷が落ちた
太陽の光すら届かないほど分厚い雲に覆われた空の下、文字通りバケツの中身を逆さまにしたような勢いで冷たい雨が地面をたたきつけるように降り注ぐ
古ぼけた洋館の窓から強烈な紫電の光を一人の男がぼんやりと眺めている
「……、明日は晴れか…」
願望ではない。確信をもって男はそう呟き、部屋の中央に配置されているセミダブルのベッドに眠る二人の子供へと視線を向ける
顔立ちのよく似た男の子と女の子、恐らく双子なのだろう。
この天空の呻き声など耳に入らない程熟睡しているのか、耳を劈くような轟音にも動じず、規則正しくシーツが上下している。
男はふっと小さく微笑み、ベッドの脇に腰掛け二人の頬を優しく撫でる
「……明日でお別れだな…。"外"に行っても仲良くするんだぞ…」
眠っている二人にその声が届くはずも無いが、男は愛しい我が子を見るように優しく囁いた
「…良い夢を…。そして…」
ベッドから立ち上がり部屋のドアを開け、男は細心の注意を払いながら部屋を後にした
『良い夢を…。そして……新たな人生に暖かな光を…』
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