8、No title【長編?短編?/異能力迫害/オムニバス】

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「あーっれぇ?ここどこだ?」 街から離れた雑木林に気の抜けた声が響く。 街の一角に位置する学園の制服を身につけた栗毛の少年、トオリは見慣れない景色に戸惑い、若干混乱していた。 「ぼーっとしながら歩いてたら変なとこに来ちゃった……。どーしよ…、ここって明らかに街の外だよなぁ…」 はぁ、と注意力散漫な自分に溜息を吐いてみる。 彼の性格を一言で例えるなら、天然、だろうか…。 決して頭のネジが飛んでいる訳ではないのだが、どこか"おじいちゃん"を思わせる雰囲気の持ち主なのだ。 例えば、入学書類の趣味の欄には堂々と「散歩」と書き、雨の日以外は毎日欠かさずふらふらとその辺りを歩き回る。そしてふと立ち止まっては四つ葉のクローバーを探し始めたりする。 とにかく自由気まま、マイペース、慌てず騒がず、のんびりと毎日を過ごしている。 そんな彼が何故こんな雑木林に迷い込んだのかといえば、先の通りだ。 つまりは何も考えずに散歩していたらたどり着いた、と、そういうことだ。 トオリはどうしようかな、と少し考えてみた 街の周辺にある雑木林といえば北にある1か所くらいしか思いつかない。 ならばこのまま南の方向に歩けば町に着けるだろう そこまで分かってはいるのに未だに足を動かそうとしないトオリだが、理由は一つ 「……南ってどっちだっけ?」 今自分がこっち向いてるんだから、後ろに歩けば南に行けるのかな? でも曲がったりもしたからもしかしたら西とか東を向いてるかもしれないし… 北極星の位置を見れば…とも思ったが、トオリにはどれが北極星なのかも分からないし、そもそも今は昼の時間帯なので星なんて見えるはずも無い。 どうしようもない ここで焦りを感じたりするのが普通なのだろうが、そこは自由気ままなトオリ "とりあえず歩けばどっかに行けるよね" などとポジティブ過ぎる思考に切り替え、そのまままっすぐに足を進めていった ちなみに、これが北の方向に進んでいるのだがトオリが知るはずも無い
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