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視界いっぱいに広がる黄緑と茶色の色彩は全く変わらず、気づけば20分ほど歩いていた。
ふらりふらりと足を進めるだけのトオリに時間の感覚など分かるはずもなく、いつかどこかの街か村に付けることを祈ってただひたすら歩き続けていた。
ふと、トオリの耳に幼い子供のような声が入りこんできた
人がいる。
もしかしたら人里があるのかもしれない。
そう思ったトオリは、あまり頼りにならない聴覚を頼りに声のする方へと進路を変えた
しばらく歩くと、ぽんぽんっ、と弾みのある音が新しく聞こえてきた。
確実に人がいる
「…誰かいますかー?」
ガサガサと背の低い木を横切りながら、小さく尋ねてみる。
確かに聞こえた子供の声と、ボールが弾むような音が段々はっきり聞こえるようになり、やがて舗装されていない雑木林から、何やら開けた場所に出た
「誰かーー。居ないんでぶっ!!」
先程から何度も聞こえているぼよーん、という弾力性のある音がしたと思った。
瞬間、トオリの視界が鮮やかなピンク色で覆われ、直後に柔らかいような物体が鼻に当たりトオリになんとも言えない痛みと不快感が生まれた
「~~~……っ!」
ぽん、ぽん、ぽん、と威力を無くしたボールが地面に落ちる。
鼻の頭を押さえ、微妙に潤んだ視界で前を見ると、ピンク色のゴムボールを両手で持った男の子が申し訳なさそうにトオリを見ていた
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