10人が本棚に入れています
本棚に追加
/164ページ
「あの、お兄ちゃん…ボールぶつけちゃってごめんなさい……わたし、お兄ちゃんにぶつけようなんて思ってなかったの…。
ボールを投げたら、お兄ちゃんが出てきて、それで…でも…怒られたらどうしようって思ったら……セルアが、代わりに……」
「…えと、セリカ…ちゃん?」
「なっ、何……?」
「あ…怒ってないからそんな身構えないでよ。寂しくなっちゃう…」
まだ警戒が解けきらない女の子、セリカの視線と合わせるようにトオリは屈み、ぽん、と彼女の頭に手を乗せる
セリカは何が起こったのかいまいち分からず、男の子、セルアと同じようにきょとんとした表情でこちらを見ていた
「偉いよ、普通なら謝らないで逃げる子ばっかだもん。
それにほら、普通、いきなり草の中から人が出てくる事なんて無いしさ…、俺も前見てなかったのが悪いんだし気にしないで」
極力刺激を与えないように気を付けながらトオリはセリカの頭を撫でる。
二人はトオリが怖い人ではないと理解したのか、顔を見合わせて何やらコクコクと頷いていた
いまいちトオリには理解できないが、この兄妹(姉弟)同士にしか分からない秘密の交信か何かなんだろうな、と想像する
「お兄ちゃん優しいね!」
とセリカ
「優しいお兄ちゃんありがとう!」
とセルア
似たような声色で言われると、どっちがどっちか分からなくなりそうだったが、「優しい」と言われてトオリは内心嬉しかった
――そこで重要なことを思い出した
最初のコメントを投稿しよう!