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「ただいまー」
「パパ、お客さん連れてきたよ!」
元気な声が明かりの少ない屋敷に木霊する。
その"いかにも"な雰囲気に、トオリは内心、「ただでさえ見た目が怖いのに電気も少ないなんて!」
と叫ぶが、そんなトオリの内情なんて知らないセリカとセルアは慣れた足取りである部屋へと向かう
「パパただいま!」
開かれた扉の向こうは厨房だった。
普通ならばキッチン、台所、などの名称を用いるのだろうが、この設備の良さと広さからすれば厨房と呼んだ方がしっくりくる。
セルアがパパと呼んだ先には、エプロンを付けて黙々と料理を作っている男がいた。
男は丁度完成したらしいフライパンの中身を皿に移しながらこちらに視線を向けた
その表情は、確実に驚いている。
たぶん、見知らぬトオリの存在に
「………、誰だ?」
無愛想な声が短く響く
抑揚の無い威厳のある声の割に外見は若く、あまり洞察力に優れていないトオリから見ても20台の後半あたり…もし童顔だったとしてもせいぜい30代前半くらいだろうと予想付く
男の一言に、二人は元気よく答える
「あのね、迷子なんだって!」
「ボールぶつけちゃったの!」
異句異音。全く関連性の無い内容がそれぞれが口から出る。
そんな双子達に、トオリは「そんな部分的な説明じゃ誰も分からないよ」と突っ込みを入れたが、どうやら男はその説明でなんとなく理解したらしい
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