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「いただきまーす!」
双子の無邪気な声が場の空気を明るく照らす。
その言葉を合図にセリカとセルアはマナーや常識なんて知らないとでも言うように思いっきり食べ始める
そんな中、なぜか向かい合って座ることになった二人の父親とトオリはなにも言わずに黙々と食事を進める。
最も、食べているのは父親だけであって、トオリは居心地が悪そうに座っているだけだったが…
「――あ、あの……、いきなり夕飯とか…良かったんですか?」
どうしていいのか分からない現状を打開するため、トオリは咄嗟に口を出した
が、男はその言葉を別の意味として受け取ったのか
「……不味いなら食わなければいい」
「違いますっ!断じて違います!!むしろ美味しそうです!!!」
「…ならさっさと食え。冷める」
「はいっ!」
先程と同じように、やはり男の言葉に充てられスプーンを持つ。
何だか、そうしなければいけない気がした。本能的に。
ずず、とスープを一口飲みながら、トオリは思った
美味しい……。
別にふざけてるわけではない。本当に美味しかった。
暖かいスープが胃の中に落ちたことで若干の落ち着きを取り戻したトオリは視線だけを動かして部屋の中をまじまじと見た
余計な装飾が一切無く、隅々まで掃除が行き届いた、とても綺麗な部屋
そう言えば聞こえはいいのだろうが、"生活感がある"とはお世辞にも言えない。
きっと、この食事の時間だけが部屋に生活感を与えているくらいなのだろう
そう、今みたいに、野菜炒めの肉ばかりを得って食べるセルアの頭に拳が振り下ろされている光景とか…
あはは、と苦笑を洩らしながらトオリはそう感じた
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