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それにしても――…
…どうしてこの人たちはこんな場所で暮らしているんだろう…
こうして夕飯を食べているということは、少なくとも食材の買い出し程度には町へ足を運んでいるんだろうけど…
それでもセリカ、セルアのような、どう見ても4,5歳程度の子供と暮らしているならこんな場所にいるのは相応しくない
きっと来年か再来年、この2人は学園に通わなければいけなくなるだろう。
それならこんな街外れの場所ではなく、街へ行って人との交流を深めさせるべきなのではないだろうか…
不思議だ…、とスープを飲みながらトオリはそんな事を考えていた。
その様子を違う意味で捉えたのか、男が突然口を開いた
「…なんだ、やっぱり不味いのか?」
「へっ?!ち、違いますよ!!ただちょっと考え事していただけで……、料理、むしろ美味し過ぎるくらいです」
「…そうか」
別段なんとも思っていないような表情で男は呟いた。
そして男は二人に顔を向け、
「セリカ、セルア、今日は早く寝るんだぞ。絶対に夜更かししないように。いいな?」
半ば命令染みたような、否定はさせないような、そんな口調で2人に言った
前々から似たような注意をされていたのか、二人も平然と答える
「もちろん!」
「"きねんび"だもんね!」
「……。記念日?二人の誕生日か何かですか?」
寡黙そうなこの男が念を押す程に重要な"記念日"とは一体何なのか、と気になってトオリは聞いてみた。
だが男は少々の間を開け、軽く流す程度にしか答えはしなかった
「…ある意味では誕生日だ」
「え……、それって、どういう…?」
「食い終わったんなら片付けろ。セリカとセルアももう部屋に戻れ」
「はーい!」
「え、あの、ちょっと……」
「あとで地図を書いてやるから、とりあえず食器を運べ」
「えと、その…はい…」
有無を言わさない男と、それを大人しく受け入れる2人に圧倒され、結局トオリは訳が分からないままこの話は終わってしまった
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