10人が本棚に入れています
本棚に追加
「……。
二つ目はこの城内に人間側のスパイが紛れ込みました。被害はクローフィ様の部屋にある調度品が数点と、クローフィ様の秘密のお菓子入れの中身。被害額も少なく、ただの盗賊だったようなので見逃しました」
が、それに流されるようなヴァーニエではなく、変わらない笑顔のまま現状報告を続けた
憤怒100%の怒りと殺傷力100%の笑顔がぶつかる。
全くかみ合わない会話が淡々と続き、必至に言い返す俺の息が荒くなってくる。
「だからお前は人の話を……、っつか捕まえろよ盗賊!!何見逃してんだよ!」
っていうか俺の部屋に盗人が?!何が盗られたんだ!ファリスの壺か?!テレフトリの絵画か?!っていうか俺のお菓子ーーーーーー!!!
「クローフィ様は間食が多すぎます。この前も虫歯になったじゃありませんか…。
いくら歯を磨いてもその後にお菓子を食べては意味がありません。今回のことは食生活を改める良い機会だと私は思っています」
後光の差す笑顔で悪びれも無く告げるヴァーニエ。
深く突き詰めれば、部外者を易々と城内に侵入させ、あまつ城主である俺の私物の盗みを平然と帰してしまうような警備体制に問題があるのだが、ヴァーニエを前にすると何故かそんな理由も思いつかず自分が悪いような気にさせられる
…あの笑顔さえなければっ!
「今回の報告は以上です。別段大きな動きもありませんでしたのでご安心ください」
「……。ほんっと、性格悪ぃ…」
「私は事実を述べたまでです」
「………この腹黒が…」
折角3日ぶりの自由を手にしたというのに、早々からこんな中も外も真っ黒な側近の嫌味ったらしい(本当の意味で)現状報告を聞かされてせっかく上昇していたテンションが一気に下降していった
「あぁ、書類がそろそろ危ないので表に出ていられる間に終わらせてくださいね」
「……」
テンションは墜落した
上昇はもう不可能だろう
最初のコメントを投稿しよう!