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「やって…られっかよ!!」
和輝が話し始めた。
「今更、頑張ったって
オレは…
甲子園に出れねーし…」
理奈が表情を厳しくして
顔を上げる。
「そんなこと…
言わないでよ……」
「確かに宇柳くんは
先輩より上手だけど
監督は実力より
今年最後の先輩を
優先して選んだ…」
一呼吸置く。
真っすぐに和輝を見つめる。
その瞳は迷いなく
澄み切っていた。
「……
宇柳くんには…
実力があるんだから
諦めないで!!」
和輝はきつく唇を結んだ。
「バッカみてぇ…」
一つに結んだ理奈の
髪がふわりと揺れた。
風に乗せて言葉が
聞こえた気がした。
太陽が容赦なく照り付ける。
その輝く光は眩し過ぎた。
汗が滲む。
誰も傷つくことなく
愉しく野球が出来たら
どんなにいいだろう。
向こうで監督が和輝を呼んだ。
和輝はベンチから飛び降り、
理奈に目もくれず
走っていった。
たなびく背番号を見つめ
あまりの眩しさに目を細めた。
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