第一章

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こういう空気は…苦手だ。 気まずい…。  「こんばんは!」 なんて笑って言えないし… 「なんで?」 なんて、更に聞けない。  顔を見合わすあたしと椎名さんに、“タカギ”だけがただキョロキョロとしていた。  「じゃ…じゃあ!」  言葉の見つからないあたしは、手に持っていたタカギの書類を押しつけるように彼に渡し、方向転換した。 「あっ待って!」 呼ばれたような気がしたけど…、あたしは振り返らず走った。 ………あたしが逃げる必要も、走る必要もないのに…。  駅について改札を走って抜けると、ちょうど止まっていた下りの電車に飛び乗った。  「はぁ…はぁッ」  なんだか………  ドキドキする。  走ったからとかじゃなくて… その…………  嬉しかったんだ…。  “タカギ”と話せた…。  話した…。  掴まれた左腕が…  まだ熱い…。 
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