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二人がつき合っていたと言う話しは聞いたことがなかった。
告白したときだって、彼は一言もそんなことは言っていない。
そうか、昨日からつきあいはじめたのか。
次の角で、二人は照れくさそうに笑うと手をふって別れた。
去っていく彼女を名残惜しそうに見つめて、彼は雨にぬれながら走っていく。
なんとなく、彼は誰ともつきあわないような気がしていた。
自分がふられたように、他の人も断られているような気がした。
やっぱり恋は甘くない
なんて思ったりして。
同じようにチョコを食べたりして。
だけど、そんなことはなかったのだ。
彼が私に言った言葉は
当然私だけに言ったのであって
全員共通なはずがなかった。
それは当たり前のことで
ふられたのも私で。
そんなことわかっていたのに、なんだか裏切られたような気がした。
彼に、と言うわけではなくて
ただ誰ともない誰かに。
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