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翌日、学校ではまことしやかな噂が流れていた。
私の名前なんて一文字たりともでてこない、全く関係のない噂だ。
バレンタインの次の日ということもあってか、誰かがつきあい始めた、などというありきたりな話し。
正直、ふられた自分にスポットがあてられてなくてほっとした。
まなみと話しをしながら、背中越しにそのうわさ話を聞いた。
まなみもその話しに興味があるようで、お互いがうわの空。
帰り、昇降口をでると雨がふっているのに気がついた。
私とまなみは折り畳み傘を開いて、狭い道を歩き始める。
「ねー。小倉くんと坂野さんて、意外だよねー」
「そう?なんだかあの二人、ちょっと前からあやしくなかったぁ?」
「まじで?気づかなかった」
他人の恋愛話はおもしろい。
私は、自分のことを忘れて彼女との話しに花を咲かせた。
雨は、小降りながらも降り続いている。
「あ、車きた」
「ほんとだ。あぶなっ」
すぐ横をすれ違っていった車の後ろ姿は、すぐに遠ざかっていく。
いつの間にか、雨の匂いがしていた。生ぬるい熱気が肌をなぞる。
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