━━那樹━━

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 那樹はいつもの見慣れた光景を見ていた。  天井から吊らされた鎖に両手をまとめて拘束され、爪先立ちの丸太。丸太は全裸に剥かれ、所々赤い線があり、そこから出血している。丸太とは部隊で使われる捕虜の隠語だ。  丸太は男から鞭を打たれて、呻きを洩らしている。男は自分たちに気付いたようで鞭を打つ手を止め、こちらに歩いてきた。  「お疲れ様です、軍曹。そちらは?」  「こちらは片桐 杏中尉です。今日から部隊に来られました」  男は片桐に「失礼しました、片桐中尉」と申し訳なそうに頭を下げた。それに片桐は軽く手を挙げ応えた。気にするな、ということなんだろう。  「ところで、今は何をしているんだ?」  「丸太の拷問及び尋問です。まだ始まったばかりなので、情報は聞き出せてないですが……」男は暗い面持ちになり答えた。  「なるほどね。俺もやってみていいか?」  男は片桐の質問に対し、那樹に視線を向けてくる。那樹に意見を求めているのだろう。  「はい。少し難しいと思いますが……」那樹は片桐の隣で答え、それから男が鞭を片桐に手渡した。
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