紅ノ鮮血

━━片桐 杏━━

　那樹の説明によると、この広大な建物は三棟に分かれている。寄宿舎として使われている三号棟。村田と応答した部屋は、村田の事務室で三号棟に属している。そして、実験・研究を行う一号棟と二号棟。
　一号棟と二号棟は、更に使用用途で分けられる。
　一号棟は敵兵の拷問・尋問が行われ、二号棟では丸太を使った限界実験だ。後者をこの部隊は主にしている。
　今は一号棟を歩いていた。
　「片桐中尉。実験の様子を見ていきますか？」
　那樹は扉の前に立ち止まって、こちらを振り向き尋ねてきた。
　ここでの任務は残忍で、血生臭いものになるだろう。なら、早い内に慣れておくのが良策だ。
　片桐が「ああ、そうするよ」と返事を返すと、那樹は目の前の扉を開き、片桐の入室を促した。それに従い、片桐は部屋へ足を踏み入れた。