5通目

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  文通が長く続くことってこのご時世にどれだけあるのだろう?     会社から帰宅して覗いたポストにあった君からの突然の来訪に私はふと思った。     何年か過ぎた頃に年賀状をやり取りするようになって、1年に1回の見慣れない、     不格好な文字が、慣れない様をありありと浮かばせながら紙面に浮いていた。     一文字一文字を愛おしく指で追いながら君を考えてみた。     顔も素性も知らないで、もうオリンピックを2回も開催できる時が過ぎて。     幾度か会おうだなんて言っていたのに、会うことはなかった。     きっとそれが巡り会わせってやつなんだろうなぁって、     年に数回のやり取りで私の手元に収まる機械に浮かぶ文字を見て思っていた。     パソコンの前に向かって夜更かししながら君とリアルタイムで話していた     あの頃、君はまだ高校生だったんだ。     たどたどしい敬語と、危うい雰囲気が今は懐かしい。     そんな懐かしさを引き戻すくらいの君の気配が手紙から浮かぶ。     全然、変わってないんだなぁ。     真っすぐな言葉と拙いながらも精一杯に私を好きだと言ってくれた君がいる。     『何も知らないのに?』     『なら知ればいい』     姿形なんていらない、僕は貴女の中の形を知っています。     男の子から男になって妙に色気づいたことをなんて思いながらも、少しだけ、そんな若さに惹かれたりして。     でも君は一度も私の隣にいない。     あれから、私も君も、沢山の出会いと別れを     --なんて言うと安っぽいけど--     経験して、君はあの時の私の歳を越えてしまった。     でも、変わらないね。     堅苦しくてズレてて、今、君に返事を返すよ。     『来月に、会いませんか?     幾星霜の日々を過ぎて、貴女の事を思い出しました。     あの頃のままに、突然に逢いたくて。     身勝手で、突然の無礼失礼します。     都合が合えば、いえ、多分、否定の言葉をお待ちしてます。』
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