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ああ、よかった。
普通にしゃべれそうだ……
それより暑く無いのか?
なんて、思いながらも僕は返事をする。
あ、はい
見学者です
今日からお世話になります
よろしくお願いします
と、汗を拭きながら来意を告げた。
「おお! そうかそうか! 君が、だったか! よかったよかったー。見学者が来るとしか聞いていなかったからな。もっと気持ちの悪いオッサンだったりしたらどうしようかと思っていたところだったんだよ」
そう、男の研究員が腰に片手を当てて、はっはっと笑いながら言った。
「あらま、そんな要らない事言わないのっ。見学者様に失礼でしょう? あぁ、でも本当によかったわ。貴方みたいな方で。
最近ここに運ばれて来るのはゴミばかりで、
ちょっと新鮮さが欲しかったところなのよ」
男の研究員を注意した後、女の研究員がこちらに向き直り、目を細める。
その仕草から見て、直感的に二人は夫婦かなと思った。
「まぁ、なんだ。こんなところで話してるのも何だから、さっさと研究所へ行こうぜ」
そう言って短くふふっと笑ったかと思うと、男の研究員が後にある森へと向かって歩き出していた。
あ! はい!
と、僕は暑くて死にそうな気分でいたのも忘れるくらいワクワクしていることに、自分でも驚きながら、それに何の恥ずかしさも感じずに元気よく返事をし、期待に胸を高鳴らせながら、研究員の後を追って島の奥へと向かった。
――
その、"ゴミばかり"という言葉の恐ろしさも知らずに。
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