659人が本棚に入れています
本棚に追加
ライブ会場は小さなライブハウスだった。
この日だけは貸し切りでそれぞれのメンバーの家族や、友人だけしかいなかった。
「皆、今からライブするよ!」
潤が笑顔で言った。最前列にいた潤の息子である利弥と娘の理沙がはしゃいでいる。
「トシ、リサ、パパのこと見てるんだよ!」
和気あいあいといった潤のペースだ。
「ねぇ雄ちゃんのお嫁さんはいないの?」
亮がドラムセットの調子を確かめながら尋ねた。
「ジェーンは来てねぇ。だけど、あそこのガキは俺のガキだ」
ライブハウスの隅の方でじっと見入っている少年がいた。金髪で雄也に似た黒い瞳だ。
「へぇー……雄ちゃんと違って可愛いねぇ」
「うるせぇ」
雄也はチューニングを済ませてギターを軽く弾いた。
「俺はオーケーだ」
「あーっ!」
と、声を上げたのは太朗だった。客席の女性を指差している。
最初のコメントを投稿しよう!